神社や神棚について調べていると、必ずといっていいほど出てくるのが「大祓詞(おおはらえのことば)」です。
名前は聞いたことがあっても、
- 大祓詞って何?
- 何と書いてあるの?
- どう読めばいい?
- どんな意味なの?
- 神棚で唱えてもいいの?
- 「祓詞」や「天津祝詞」と何が違うの?
という疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
前回の記事で、「唱えことば」と「祓詞」の原文・現代語訳を紹介しましたが、この記事では、大祓詞について、原文・読み方・現代語訳・意味・唱え方まで、できるだけ分かりやすくまとめます。
※大祓詞には神社や伝承によって本文・漢字・読み方に異同があります。この記事では、一般に広く用いられている本文をもとに紹介しています。また、現代語訳は逐語訳ではなく、意味を理解しやすくするための意訳です。
大祓詞とは
大祓詞は、神道における代表的な祓いの祝詞です。
「大祓(おおはらえ)」は、知らず知らずのうちに犯した罪や穢れを祓い、清らかな状態に戻るための神事です。
現在でも、
- 6月30日の「夏越の大祓」
- 12月31日の「年越の大祓」
などで、大祓詞が唱えられます。
神社では神職が奏上しますが、家庭の神棚で唱える人もいます。
大祓詞は何を唱えているのか
大祓詞は、単純に「悪いものを取ってください」とお願いする文章ではありません。
大きく見ると、
- 神々によって日本の国が整えられた
- 人々が暮らす中でさまざまな罪や過ちが生じる
- それらを祓う方法が示される
- 祓いの力によって罪や穢れが遠くへ流される
- 最後に、清らかな状態になることを願う
という壮大な物語になっています。
つまり大祓詞は、「人間についた罪や穢れを祓い、本来の清らかな状態に戻す」ための祝詞と考えると分かりやすいでしょう。
大祓詞の全文
ここからは、大祓詞を「原文」「読み方」「現代語訳」の順に見ていきます。
1.神々が国を治めることになった
原文
高天原に神留坐す皇親神漏岐神漏美の命以ちて、八百万の神等を神集へに集へ給ひ、神議りに議り給ひて、我が皇御孫命は豊葦原瑞穂の国を安国と平けく知ろしめせと、事依さし奉りき。
読み方
たかまのはらにかむづまります
すめらがむつかむろぎ・かむろみのみこともちて、
やおよろずのかみたちをかむつどえにつどえたまい、
かむはかりにはかりたまいて、
あがすめみまのみことは、とよあしはらのみずほのくにを、
やすくにとたいらけくしろしめせと、
ことよさしまつりき。
現代語訳
高天原にいらっしゃる皇室の祖先神である神漏岐・神漏美の神々が、八百万の神々を集めて相談されました。
そして、皇御孫命に対して、
「豊かに実りあるこの国を、平和で穏やかな国として治めなさい」
と委ねられました。
✳︎ 神漏岐・神漏美とは?
一般には、
神漏岐(かむろぎ)は男性の祖神・男性神、・神漏美(かむろみ)は女性の祖神・女性神、を表す古い神道語です。イザナギ・イザナミと結び付けて説明されることもありますが、本文上で両者と完全に同一視されているわけではありません。
2.荒ぶる神々を鎮め、国を整える
原文
此く依さし奉りし国中に荒振る神等をば神問はしに問はし給ひ、神掃ひに掃ひ給ひて、言問ひし磐根樹根立草の片葉をも言止めて、天の磐座放ち、天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて、天降し依さし奉りき。
読み方
かくよさしまつりしくになかに、あらぶるかみたちをば、
かむとわしにとわしたまい、かむはらいにはらいたまいて、
ことといわしいわね・きねたち・くさのかきはをもことやめて、
あめのいわくらはなち、あめのやえぐもをいづのちわきにちわきて、
あまくだしよさしまつりき。
現代語訳
こうして国を治めることを委ねられた後、国の中にいた荒ぶる神々について神々が問いただし、祓い、鎮めました。
そして、天地を整え、皇御孫命を地上へお降ろしになりました。
3.人々の罪や過ち
原文
此く依さし奉りし四方の国中と大倭日高見の国を安国と定め奉りて、下つ磐根に宮柱太敷き立て、高天原に千木高知りて、皇御孫命の瑞の御殿仕へ奉りて、天の御蔭日の御蔭と隠り坐して、安国と平けく知ろしめさむ国中に成り出でむ天の益人等が過ち犯しけむ種種の罪事は――
読み方
かくよさしまつりし、よものくになかと、おおやまとひだかみのくにを、
やすくにとさだめまつりて、
したついわねにみやばしらふとしきたて、
たかまのはらにちぎたかしりて、
すめみまのみことのみずのみあらかをつかえまつりて、
あめのみかげ・ひのみかげとかくりまして、
やすくにとたいらけくしろしめさむ、くになかになりいでむ、
あめのますひとらが、あやまちおかしけむ、くさぐさのつみごとは――
現代語訳
このようにして国を平和な国として定め、皇御孫命の宮殿を立派に建てました。
そして、その国に暮らす人々が、暮らしの中で犯してしまったさまざまな罪や過ちが問題となります。
4.天つ罪
原文
天つ罪とは、畔放ち、溝埋め、樋放ち、頻蒔き、串刺し、生剥ぎ、逆剥ぎ、屎戸、許許太久の罪を天つ罪と法り別けて――
読み方
あまつつみとは、あはなち、みぞうめ、ひはなち、しきまき、くしざし、
いきはぎ、さかはぎ、くそと、ここだくのつみを、
あまつつみとのりわけて――
現代語訳
天つ罪とは、農地の境界を壊すこと、用水路を埋めること、灌漑設備を壊すことなど、古代の農耕社会において重大とされたさまざまな行為です。
現代の感覚だけで一つひとつを判断するのではなく、古代の社会における秩序を乱す行為として理解すると分かりやすいでしょう。
国つ罪
原文
国つ罪とは、生膚断ち、死膚断ち、白人、胡久美、己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪、畜犯せる罪、昆虫の災、高つ神の災、高つ鳥の災、畜仆し、蠱物為る罪、許許太久の罪出でむ。
読み方
くにつつみとは、いきはだたち、しにはだたち、しろひと、こくみ、
おのがははおかせるつみ、おのがこおかせるつみ、
ははとことおかせるつみ、ことははとおかせるつみ、
けものおかせるつみ、はうむしのわざわい、
たかつかみのわざわい、たかつとりのわざわい、
けものたおし、まじものするつみ、ここだくのつみいでむ。
現代語訳
国つ罪として、身体に関わる罪、親子や人間関係に関わる罪、動物に関する罪、災いなど、さまざまな罪が挙げられています。
ここで挙げられている罪には、現代では意味が分かりにくいものもあります。
これは大祓詞が古代に成立した祝詞であることを示す部分でもあります。
罪を祓うための準備
原文
此く出でば天津宮事以ちて、天つ金木を本打ち切り末打ち断ちて、千座の置座に置き足らはして、天津菅麻を本刈り断ち末刈り切りて、八針に取り辟きて、天津祝詞の太祝詞事を宣れ。
読み方
かくいでば、あまつみやごともちて、
あまつかなぎをもとうちきり、すえうちたちて、
ちくらのおきくらにおきたらわして、
あまつすがそをもとかりたち、すえかりきりて、
やはりにとりさきて、
あまつのりとのふとのりとごとをのれ。
現代語訳
このような罪が現れたなら、神聖な祭祀の作法によって祓いの準備を整え、祝詞を唱えなさい、という意味です。
ここから、いよいよ本格的な「祓い」の場面へと進みます。
天つ神・国つ神に届く祓い
原文
此く宣らば天津神は天の磐門を押し披きて、天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて、聞こしめさむ。
国津神は高山の末、短山の末に登り坐して、高山の伊褒理、短山の伊褒理を掻き別けて、聞こしめさむ。
読み方
かくのらば、あまつかみはあめのいわとをおしひらきて、
あめのやえぐもをいづのちわきにちわきて、きこしめさむ。
くにつかみはたかやまのすえ、ひきやまのすえにのぼりまして、
たかやまのいぼり、ひきやまのいぼりをかきわけて、きこしめさむ。
現代語訳
この祝詞を唱えると、天の神々は天の門を開き、幾重にも重なる雲をかき分けて、その言葉をお聞きになります。
また、国つ神々も山に登り、霧や雲をかき分けて、その言葉をお聞きになります。
つまり、祓いの祝詞が神々に届くという場面です。
罪や穢れが遠くへ流される
原文
此く聞こしめしてば、罪と言ふ罪は在らじと、科戸の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く、朝日ののぼる瀬戸の潮の八百道の八潮路の潮の八百曾に坐す速開都比売と伝ふ神、大海原に持ち出でなむ。
読み方
かくきこしめしてば、つみというつみはあらじと、
しなどのかぜのあめのやえぐもをふきはなつことのごとく、
あさひののぼるせとのしおのやおじのやしおじのしおのやおあいにいます、
はやあきつひめというかみ、おおうなばらにもちいでなむ。
現代語訳
神々がお聞きになれば、罪という罪はなくなるでしょう。
それは、風が空の雲を吹き飛ばすように、罪や穢れが取り除かれていくということです。
そして、その罪は海へと運ばれていきます。
祓戸の神々によって清められる
原文
此く持ち出で往なば、荒潮の潮の八百道の八潮路の八百曾に坐す速佐須良比売と伝ふ神、持ちかか呑みてむ。
読み方
かくもちいでいなば、あらしおのしおのやおじのやしおじのやおあいにいます、
はやさすらひめというかみ、もちかかのんでむ。
現代語訳
海へ運び出された罪や穢れは、速佐須良比売という神がすべて受け取り、飲み込んでしまいます。
ここでは、罪や穢れが人のもとから完全に離れていく様子が描かれています。
根の国・底の国へ吹き放つ
原文
此くかか呑みてば、気吹戸に坐す気吹戸主と伝ふ神、根国底国に気吹き放ちてむ。
読み方
かくかかのんでば、いぶきどにいますいぶきどぬしというかみ、
ねのくにそこつくににいぶきはなちてむ。
現代語訳
罪や穢れを飲み込んだ後、気吹戸主という神が、それを根の国・底の国へと吹き飛ばします。
罪や穢れがさらに遠くへ運ばれていきます。
最後に罪が消え去る
原文
此く気吹き放ちてば、根国底国に坐す速佐須良比売と伝ふ神、持ち佐須良ひ失ひてむ。
読み方
かくいぶきはなちてば、ねのくにそこつくににいます、
はやさすらひめというかみ、もちさすらいしてうしないてむ。
現代語訳
根の国・底の国へ送られた罪や穢れは、速佐須良比売という神によってさらに遠くへ運ばれ、ついには消え去ります。
大祓詞の結び
原文
此く佐須良ひ失ひてば、今日より始めて罪と云ふ罪は在らじと、祓へ給ひ清め給ふ事を、天つ神、国つ神、八百万の神等共に聞こしめせと白す。
読み方
かくさすらいしてうしないてば、
きょうよりはじめて、つみというつみはあらじと、
はらえたまい、きよめたまうことを、
あまつかみ、くにつかみ、やおよろずのかみたちともに、
きこしめせともうす。
現代語訳
このようにして罪や穢れがすべて消え去ったなら、
「今日から後は、罪という罪はなくなりますように」
と願います。
そして、天つ神、国つ神、八百万の神々に、
「この祓いと清めをお聞き届けください」
と申し上げます。
これが大祓詞の結びです。
大祓詞に登場する祓いの神々
大祓詞の後半には、罪や穢れを次々に運び去っていく神々が登場します。
代表的な祓戸の神々として、次の神々が知られています。
| 神様 | 役割として説明されること |
|---|---|
| 瀬織津比売(せおりつひめ) | 罪や穢れを川・海へ流す神 |
| 速開都比売(はやあきつひめ) | 海へ流されたものを受け取る神 |
| 気吹戸主(いぶきどぬし) | 根の国・底の国へ吹き放つ神 |
| 速佐須良比売(はやさすらひめ) | 最後に罪や穢れを消し去る神 |
ただし、本文の伝承や神社・流派によって、神名の扱いや説明には違いがあります。
特に「大祓詞の本文にどの神名がどの順番で登場するか」については、現在一般に流布している本文にも異同があります。
そのため、神社で奏上される大祓詞と、書籍やインターネットで見る本文が完全に一致しないことがあります。
大祓詞と茅の輪の関係
6月30日の「夏越の大祓」でよく見かけるのが「茅の輪」です。
茅の輪をくぐることで、半年間の罪や穢れを祓い、残り半年を無事に過ごすことを願います。
一般的には、
「水無月の夏越の祓する人は、千歳の命延ぶというなり」
という和歌を唱えながら茅の輪をくぐる神社もあります。
大祓詞と茅の輪は、ともに「祓い・清め」に関係する神道の習慣ですが、大祓詞そのものが茅の輪くぐりの全文というわけではありません。
神棚で大祓詞を唱えてもいい?
家庭の神棚で大祓詞を唱えること自体はできます。
ただし、必ず唱えなければならないものではありません。
神棚では、
「二礼二拍手一礼」
の作法でお参りし、日々の感謝や願いをお伝えするだけでも十分です。
大祓詞を唱える場合は、無理に毎日長時間唱える必要はありません。
例えば、
毎日の簡単なお参り
- 神棚の前に立つ
- 姿勢を整える
- 二礼
- 日々の感謝を伝える
- 必要に応じて短い祓いの言葉を唱える
- 二拍手
- 一礼
という方法でもよいでしょう。
時間があるとき
大祓詞を最初から最後まで、落ち着いて奏上します。
大切なのは、早口で暗唱することではなく、意味を意識しながら丁寧に唱えることです。
「唱えことば」と「大祓詞」の違い
神棚などでよく唱えられる「唱えことば」、
「祓え給え 清め給え 神ながら守り給い 幸え給え」
という短い言葉があります。
これは大祓詞そのものではありません。
大祓詞は非常に長い祝詞で、神話的な物語を通じて罪や穢れが祓われていく様子を表現しています。
一方、短い祓いの言葉は、日常のお参りで唱えやすい簡潔な祈りとして用いることができます。
大祓詞を唱えるときのポイント
1.完璧な暗記は必要ない
最初から暗記する必要はありません。
むしろ、意味の分からない言葉を勢いだけで唱えるより、本文を見ながらゆっくり読むほうがよいでしょう。
2.読み方に絶対的な正解があるわけではない
古語・神道用語が多いため、読み方が難しい部分があります。
神社や神職によって読み方が異なる場合もあります。
3.意味を理解すると面白くなる
最初は、
「何を言っているのか、さっぱり分からない……」
となりがちです。
私も最初はそうでした。
ところが内容を追っていくと、
「罪や穢れが生まれる」
↓
「祓う」
↓
「川へ流す」
↓
「海へ送る」
↓
「さらに遠くへ吹き飛ばす」
↓
「最後には消えてなくなる」
という、とても壮大な「祓いの物語」になっています。
大祓詞はいつ唱える?
大祓詞を唱えるタイミングに絶対的な決まりがあるわけではありません。
例えば、
- 朝、神棚にお参りするとき
- 神社へ参拝するとき
- 月末の区切り
- 6月30日の夏越の大祓
- 12月31日の年越の大祓
- 気持ちを切り替えたいとき
などが考えられます。
ただし、神社の正式な神事として行われる大祓と、家庭で個人的に祝詞を唱えることは区別して考えたほうがよいでしょう。
大祓詞を唱えるときの心構え
大祓詞は「お願いをかなえてもらうための呪文」と考えるより、
自分自身を振り返り、心身を清め、新しい気持ちで日々を過ごすための祈り
と考えると理解しやすいと思います。
特に神棚で唱える場合は、
「今日も無事に過ごせますように」
という感謝を基本にして、その上で祓いと清めを願う。
そんな気持ちで十分ではないでしょうか。
大祓詞を読むときに知っておきたい注意点
大祓詞は古い祝詞であるため、現代の私たちには意味が分かりにくい言葉がたくさんあります。
また、
- 漢字の表記
- 読み方
- 本文の一部
- 神名の表記
- 現代語訳
などには資料によって違いがあります。
そのため、インターネットで見つけた一つの文章だけを「唯一絶対の本文」と考えるのではなく、神社本庁、各神社、神道関係の書籍などを参考にするとよいでしょう。
よくある質問
大祓詞は毎日唱えてもいい?
はい。家庭で唱えること自体に問題はありません。
ただし、毎日必ず唱えなければならないというものではありません。
大祓詞を暗記する必要はある?
ありません。
最初は本文を見ながら、意味を理解しつつ読むのがおすすめです。
神棚がなくても唱えていい?
大祓詞を学び、唱えること自体は神棚の有無とは別の話です。
神社で唱える場合は、その神社の作法や案内に従うのがよいでしょう。
大祓詞と祝詞は違う?
大祓詞は「祝詞」の一種です。
「祝詞」という大きなカテゴリーの中に、さまざまな祝詞があります。
その中でも大祓詞は、特に「祓い・清め」に関係する代表的な祝詞です。
まとめ|大祓詞は「清めて、新しく始める」ための祝詞
大祓詞は、古代から伝わる神道の代表的な祝詞です。
内容を簡単にまとめると、
罪や穢れが生じる
↓
神々に祓いを願う
↓
罪や穢れが川・海へ流される
↓
さらに遠くへ運ばれる
↓
最後には消え去る
↓
清らかな状態になる
という壮大な「祓いの物語」です。
難しい古語が並んでいるので、最初は取っつきにくいかもしれません。
しかし、一つひとつ意味を知っていくと、単なる古い文章ではなく、
「一度立ち止まって、自分を清め、また新しい気持ちで歩き出す」
という、現代の私たちにも通じる考え方が見えてきます。
神社に参拝するとき、あるいは自宅の神棚に手を合わせるとき。
大祓詞の意味を少し知っているだけでも、いつものお参りが少し違って感じられるかもしれません。
本文について
大祓詞には複数の伝承・本文があり、神社や資料によって漢字・送り仮名・読み方などに異同があります。
この記事では、一般に広く知られている本文をもとに、読み方と意味を分かりやすく整理しました。
正式な神事として大祓詞を奏上する場合は、所属する神社や神職の指導に従うことをおすすめします。

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