先日の記事で、私のEDC(EveryDay Carry:日常携帯するモノ)を紹介しましたが、実は「小型ナイフ」や「マルチツールナイフ」の扱いについて触れませんでした。
アウトドアや家庭菜園などでナイフを使う機会は多いものの、EDCの小さなナイフも「どこまでが合法なのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
ここでは、ナイフ所持に関わる日本の主な法律――「銃刀法」「軽犯罪法」「都道府県条例」について、わかりやすく整理します。
銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)
まず基本となるのが「銃刀法」です。
この法律では、刃体の長さや種類によって所持そのものが制限されています。
- 刀剣類(15cm以上):登録証があれば所持可能
- 両刃のナイフ(6cm以上):所持自体が禁止
- 片刃のナイフ:所持OK。ただし正当な理由なく持ち歩くのはNG
つまり、家でコレクションとして所有する分には問題ありませんが、持ち歩くときは「正当な理由」が求められます。
軽犯罪法|「正当な理由なき携帯」の禁止
軽犯罪法第1条第2号では、
「正当な理由がなく刃物を隠して携帯していた者」が罰せられると定められています。
ただし実際の運用では、「隠しているか」よりも「正当な理由があるか」が重要視されます。
たとえば以下のようなケースです。
- ✅ キャンプや登山、釣り、園芸などの作業目的 → OK
- ❌ 車内、通勤バッグに入れっぱなし → NG
- ❌ 自衛目的・護身用 → 完全にNG
ナイフをベルトにシースで装着して「隠していない」場合でも、街中や駅構内では正当な理由がなければ違法とされます。
キャンプ道具を常に車内に積んでいる場合でも、キャンプ場の行き帰りでなければ違法とされます。
都道府県の条例|刃渡り6cm未満でも対象
銃刀法や軽犯罪法のほかに、各都道府県の「迷惑防止条例」などでも刃物の携帯を制限しています。
多くの地域では刃渡りの長さに関係なく、正当な理由がなければ携帯禁止です。
主な都道府県の条例例
| 都道府県 | 条例名 | 刃渡り制限 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 東京都迷惑防止条例 | 制限なし | 全国で最も厳しい。小型ナイフも対象。 |
| 神奈川県 | 神奈川県迷惑行為防止条例 | 制限なし | 車載ナイフも摘発対象になりやすい。 |
| 大阪府 | 大阪府青少年健全育成条例 | 制限なし | 公共の場・青少年への影響を重視。 |
| 愛知県 | 愛知県迷惑行為防止条例 | 制限なし | 交通検問での摘発事例あり。 |
| 北海道 | 北海道迷惑防止条例 | 制限なし | 登山・釣り中はOKだが街中はNG。 |
このように、条例では「刃渡り」に関係なく、携帯そのものが禁止されていることが多い点に注意が必要です。
↓ 残念ながらマルチツールのナイフも対象!



安全で合法的なナイフの使い方
- 目的を明確にする: 「菜園で枝を切る」「キャンプで調理する」など説明できる理由を持つ
- 見えないよう安全に収納: シース+袋+バッグ内収納が理想
- 移動時は車内に放置しない: 使う時だけ積む
- 公共の場では取り出さない: 威圧的・危険と判断される恐れ
- 使用後はすぐ自宅で保管: 鍵付きケースが安心
まとめ:ナイフは「道具」であり「責任」でもある
ナイフの所持・携帯を巡る法律は、刃渡りの長さだけでなく「目的」「場所」「状況」で判断されます。
キャンプや園芸など、正当な理由のもとで安全に扱えば何も問題はありません。
大切なのは、誤解されない扱い方と説明責任です。
ナイフを愛する人ほど、マナーと法を知る。
それが「本物のナイフ使いの美学」と言えるでしょう。
ナイフの所持と法律の関係|よくある質問Q&A
アウトドアやキャンプ、釣りなどで使うナイフ。便利な道具ですが、法律の規制を正しく理解しておかないと「知らなかった」では済まないトラブルになることもあります。
ここでは、銃刀法・軽犯罪法・都道府県条例を中心に、よくある疑問をQ&A形式で解説します。
Q1. ナイフを持ち歩くとすぐに違法になりますか?
いいえ。すべてのナイフの所持が違法ではありません。ただし、用途・状況・携帯の仕方によって違法になることがあります。
- 銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法):刃渡り6cm以上の「刃物」を正当な理由なく持ち歩くと違法です。
- 軽犯罪法:6cm未満でも「隠して持ち歩く」「正当な理由がない」場合は処罰対象になります。
- 都道府県条例:場所(繁華街・イベント会場など)によっては、刃渡りに関係なく持ち込み禁止となる地域もあります。
Q2. 腰ベルトにシース(鞘)でナイフを付けていれば、隠していないからOK?
残念ながら「見えるようにしていればセーフ」ではありません。
警察は「携帯の目的」を重視します。例えば、キャンプ場に向かう途中で明らかにアウトドア用と分かる格好であれば問題ない可能性がありますが、街中でシース付きナイフを腰にぶら下げていれば、威圧的行為・不審行動として職務質問や没収の対象になります。
つまり、「隠していない=合法」ではなく、「正当な理由+適切な場所での携帯」が前提です。
Q3. 6cm未満の小型ナイフなら都道府県条例も関係ない?
いいえ、条例は刃渡りに関係なく適用される場合があります。
たとえば東京都や大阪府などでは、「公共の場所での刃物所持を禁止」する条例があり、刃渡りに制限を設けていません。 つまり、カッターナイフや折りたたみ式ナイフでも、正当な理由なく携帯していれば条例違反になります。
Q4. 「正当な理由」って具体的にどんな場合?
以下のようなケースは、一般的に「正当な理由」と認められる可能性があります。
- キャンプや釣り、登山などのアウトドア活動中、またはその移動中
- 職業上の使用(料理人・大工・造園など)
ただし、「持って帰る途中」でも、袋に入れて鞄にしまうなど安全な携帯方法が必要です。
Q5. 警察に職務質問されたらどうすれば?
慌てず、落ち着いて対応しましょう。
- 使用目的(キャンプ・仕事など)を明確に説明する。
- 刃物が袋に入っている・安全に携帯していることを示す。
- 「今からキャンプ場に行く途中」など、目的地が明確なら理解されるケースもあります。
ただし、判断は現場の警察官に委ねられるため、「疑わしいものは持ち歩かない」のが最善です。
Q6. 車に常備しておくのは大丈夫?
これも注意が必要です。車にナイフを「常備」していると、職務質問などで違法と判断される場合があります。
キャンプや釣りなどの目的がある時だけ積み、普段は自宅保管が安全です。
まとめ
ナイフの所持に関しては、刃渡りだけでなく「目的」「携帯の仕方」「場所」が重要です。
- 6cm以上:銃刀法で厳しく規制
- 6cm未満でも:軽犯罪法・条例で処罰の可能性あり
- 見えるように携帯しても「正当な理由」がなければNG
アウトドアを楽しむ人にとってナイフは大切な道具。だからこそ、法を理解し、周囲への配慮を忘れずに安全に使いましょう。
これにより、日本の場合は「EDCケース」にナイフやナイフ付きのマルチツールを入れることができないのです。「EDC」は正当な理由になりませんので。
※本記事は一般的な法令解説であり、具体的な判断は地域の条例や警察の判断により異なります。最新情報は必ず各自治体や警察庁の公式情報をご確認ください。


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