神棚にお札をお祀りするとき、左右に供える「榊(さかき)」。
これまで何気なく見ていましたが、先日、神棚について調べたことをきっかけに、ふと「なぜ神棚には榊を供えるのだろう?」と気になりました。
調べてみると、榊には古くから日本人が大切にしてきた「神様と植物」の関係があり、名前の由来にもいくつかの説があります。
今回は、神棚に榊を供える理由や榊の歴史、そして「本榊」と「ヒサカキ」の違いについて調べてみました。
なぜ神棚に榊を供えるの?
榊は、神棚に供える代表的な植物です。
神道では、古くから植物や木などを神様が宿る「依り代(よりしろ)」として用いる習慣がありました。
榊もその一つです。
榊は一年を通して葉が緑色のままの「常緑樹」です。
冬になっても葉を落とさず、青々とした姿を保つことから、古くから「生命力」や「永遠」を象徴する神聖な木と考えられてきました。
そのため、神棚に榊を供えることは、
神聖な植物を神様へのお供えとして捧げる
という意味があります。
現在では神棚の左右に一対の榊を供えるのが一般的です。

榊という名前の由来
「さかき」という名前の由来には、いくつかの説があります。
「境木(さかき)」説
神様がいる神聖な場所と、人が暮らす俗世との「境(さかい)」にある木という意味から、「境木(さかき)」と呼ばれるようになったという説です。
神社の境内などに植えられている榊を見ると、この意味もイメージしやすいですね。
「栄木(さかき)」説
一年中葉が青々としていることから、
「栄える木」
という意味で「栄木(さかき)」と呼ばれるようになったという説もあります。
いずれも、榊が古くから「神聖な木」「生命力のある木」として見られてきたことを感じさせます。
ただし、榊という名前の由来については諸説あり、どれか一つに決められているわけではありません。
榊の歴史
榊と日本人との関わりは非常に古く、神道が現在のような形に整えられる以前から、木や植物を神様とのつながりに利用する文化があったと考えられています。
古代の日本では、神社のような建物の中に神様を常にお祀りするのではなく、山や岩、巨木など、自然そのものを神聖なものとして信仰する「自然信仰」が行われていました。
神様を迎える際には、木の枝などに神様をお招きするという考え方もありました。
こうした「神様が宿る木」という考え方が、現在の榊を使った神事にもつながっています。
『古事記』にも登場する榊
榊は、日本最古の歴史書の一つである『古事記』にも登場します。
有名なのが「天岩戸(あまのいわと)」の神話です。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸にお隠れになった際、神々が岩戸の前で祭りを行い、天照大御神を外へお出ししようとします。
その場面で、天宇受賣命(あめのうずめのみこと)や八百万の神々による祭りが描かれています。
このとき、天児屋命(あめのこやねのみこと)と布刀玉命(ふとだまのみこと)が、天香山(あめのかぐやま)の榊を根ごと掘り、その枝に鏡や勾玉などを飾ったとされています。
つまり榊は、古代の神話の中でも神様をお迎えするための神聖な木として登場しているのです。
榊は「神様と人間をつなぐ木」
古代の人々にとって、神様は山や森、岩、木などの自然の中に宿る存在でもありました。
そのため、神事では神様をお迎えするための「依り代」が必要になります。
榊は、その依り代として重要な役割を果たしてきました。
現在の神棚に榊を供える習慣も、こうした古くからの日本人の自然観や神道文化の延長線上にあると考えると、とても興味深いものがあります。
普段は何気なく神棚に供えている榊ですが、
榊は神様と人間をつなぐ「神聖な木」
と考えると、その意味が少し身近に感じられます。
本榊とヒサカキはどう違う?
ところで、花屋やスーパーなどで売られている「榊」をよく見ると、葉の大きさや形が違うものがあります。
実は、神棚に供えられている「榊」には、地域によって違いがあります。
代表的なのが、
- 本榊(ホンサカキ)
- ヒサカキ
です。
本榊(ホンサカキ)
本榊は、一般に「榊」と呼ばれる植物です。
学名はCleyera japonica。
ツバキ科サカキ属の常緑樹です。
葉は比較的大きく、厚みと光沢があります。
主に関東以西の暖かい地域に自生しています。
神事に使われる代表的な「本来の榊」といえる植物です。
ヒサカキ
一方のヒサカキは、学名をEurya japonicaといい、現在はサカキ科ヒサカキ属に分類される常緑樹です。
本榊と比べると葉が小さく、葉の縁には細かなギザギザがあります。
本榊より寒さに強いため、関東地方などではヒサカキが庭木として育てられていたり、神棚に供える榊として利用されたりしています。
特に本榊が自生しにくい地域では、ヒサカキを榊として用いる文化が定着しています。
本榊とヒサカキの見分け方
簡単に比較すると、次のようになります。
| 本榊 | ヒサカキ | |
|---|---|---|
| 学名 | Cleyera japonica | Eurya japonica |
| 分類 | ツバキ科サカキ属 | サカキ科ヒサカキ属 |
| 葉 | 大きめ・厚く光沢がある | 小さめ・葉の縁にギザギザ |
| 寒さ | やや弱い | 比較的強い |
| 分布 | 関東以西など | 日本各地 |
| 神事 | 榊として利用 | 地域によって榊として利用 |
特に覚えておきたいのが、地域によって「榊」として使われる植物が違うということです。
「本榊じゃないから神棚に使えない」という単純な話ではありません。
その地域の風土や神社の習慣によって、ヒサカキなどが榊として使われてきました。
関東ではヒサカキも身近な存在
私が住んでいる関東地方では、榊としてヒサカキが使われることも多いようです。
これは、本榊が比較的暖かい地域を好むのに対して、ヒサカキのほうが寒さに強く、関東でも育てやすいという事情もあります。
神棚に供える榊を買っていると、
「これは本榊なのかな?」
「ヒサカキなのかな?」
と気になることがありますが、葉の形を見比べてみると意外と違いが分かります。
こうして植物そのものに目を向けてみると、神棚がまた少し面白く感じられます。
自分で榊を育ててみる
ここまで榊の歴史や文化を調べているうちに、
「せっかくなら、自分で榊を育ててみたい」
と思うようになりました。
そこで、今年10月に実家の菜園の片隅に榊の苗木を植えてみることにしました。
神棚に供える榊を、自分の菜園で育てる。
うまく育てば、庭で枝をいただいて神棚に供えることができます。
もちろん、苗木を植えたからといって、すぐに神棚に使えるわけではありません。
まずは無事に根付いて、元気に育ってくれることが第一です。
これから何年かかけて成長を見守りながら、必要なときに少しずつ枝をいただければと思っています。
まとめ
榊について調べてみると、単なる「神棚に飾る植物」ではないことが分かりました。
榊には、
- 古くから神事に使われてきた歴史がある
- 常緑樹であることから生命力の象徴とされた
- 神様を迎える「依り代」として使われてきた
- 『古事記』の天岩戸神話にも登場する
- 神棚では神様へのお供えとして供えられている
- 本榊とヒサカキがあり、地域によって使われる植物が異なる
といった長い歴史と文化があります。
普段何気なく神棚に供えている一枝の榊。
その小さな枝の向こうには、古代から続く日本人の自然観や神様との関わりがあるのですね。
今年10月には、実家の菜園に榊の苗木を植える予定です。
次回は、実際に植えてみる榊について、「どこに植える?」「どんな土がいい?」「水やりや剪定は?」「本榊とヒサカキ、どちらを選ぶ?」など、榊の育て方を実践編として紹介したいと思います。

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